五十肩と間違えてしまうような病気は、
案外沢山あるんです。
今回は、その一部を紹介しましょう。

●肩峰下滑液包炎

肩峰下滑液包(けんぽうかつえきほう)とは、
肩の先にある肩峰と上腕骨の間にある部分で、
水枕のような役割をしています。
この肩峰下滑液包が炎症を起こすのが
肩峰下滑液包炎(けんぽうかつえきほうえん)です。

ここは、血管や神経の多いところなので、
ちょっと故障が起きると、すぐに痛みがあらわれます。

滑液包自体が炎症を起こしたり、
腱板が切れて滑液包内の液体が漏れ出したりして
これが原因で痛みが起こります。
特に60歳代の人に多く見られ、老化現象のひとつだと考えられています。

肩峰下滑液包炎(けんぽうかつえきほうえん)の治療法は、
安静にして炎症鎮痛剤を用います。

リウマチや結核などの炎症性疾患による2次性の場合は、
それらの原疾患の治療と滑膜切除が必要になることもあります。

●腱晩炎

腱板が擦り減ってきて、肩関節の痛みや運動制限が現れます。
腱板が切れれば、手術する必要がありますが、
切れるまでいかないで炎症が起きている状態です。

比較的、若年層に多く、40歳代に最も多く見られます。
高齢になると、寝返りしたときに腱板が切れることがあります。

治療法は五十肩とほぼ同じで、ステロイドと麻酔薬の局所注射が効果的です。
適度の運動療法は禁物です。
炎症鎮痛剤は効果がありません。
症状が長期に至る場合は、肩峰切除が必要になることもあります。

●鳥口突起炎(うこうとっきえん)

鳥口突起(うこうとっき)とは、肩甲骨の端にあって、
鎖骨や上腕骨・肩甲骨自身などの靱帯や腱が
全部ここに集まっているので、炎症が起こりやすいのです。

特に右肩に多く発症するのが特徴です。
治療法は、温熱・超音波などの理学療法と、
数回のステロイドや麻酔薬の局所注射を行います。

痛みがあるときは、安静にしておきましょう。

●石灰沈着性腱板炎せっかいちんちゃくせいけんばんえん)

血液中にある炭酸カルシウムが腱板に沈着し、
突然激痛に襲われます。

原因はまだ解明されていません。
圧倒的に中年女性に多く見られます。

治療法は、痛みをとるために鎮痛・消炎薬を投与する他に、
ステロイドと麻酔薬の局所注射を行います。
手術で石灰沈着を取り除くこともあります。

すぐに痛みを取り除き、早期に運動を開始することが原則です。
安静にしているだけでは拘縮を引き起こしやすいのです。

●腕二頭筋腱炎じょうわんにとうきんけんえん)
腕を外側に回したり、物を持ち上げたりするときに痛みが走ります。
上腕二頭筋は、分厚い三角筋におおわれていて目立ちませんが、
構造が複雑なため、摩擦による炎症が起きやすいのです。
若い人の場合は、過度の運動・スポーツによるものが多く、
中年以降にも多く見られます。

治療法は、肩および肘の動きを制限し、安静にすることが一番です。
痛みが強いときは、局所注射を行うこともあります。
炎症のため、罨法(あんぼう)・理学療法・内服薬も用います。

●肩関節拘縮

原因が不明瞭な1次性のものと、
骨折などによって骨や関節に異常をきたした2次性のものがあります。

治療法は、局所注射や理学療法です。
局所注射や理学療法をしても、効果があらわれないときは手術をします。
注射して痛みをとれば、肩が動くところが五十肩と違います。
しかし、肩を上げにくい状態が長く続くと、
拘縮や癒着が進み、病態も複雑になります。